■手引きの基本
手引きの基本は「自然体」です。身体も心も自然に、リラックスしていることが大切です。
1) 手引き者(誘導者のことです)は腕を自然に下げ、視覚障害者の横、半歩前に立ちます。
2) 手引き者は自分の肘の位置を分かりやすく知らせます。
(視覚障害者の手をとって肘に誘導するのもよいでしょう)
3) 視覚障害者は手引き者の肘をうしろから軽くつかみます。腕を組む形はなるべくさけましょう。
4) 手引き者が半歩前に立ったまま、二人の歩調をそろえて歩きます。
★手引きの時の注意点
1) 両手をもって誘導する、あるいはうしろから押したり抱きかかえるような誘導は、見えなくなって直後は安心感につながるようですが、視覚障害者の自由な動きを制限してしまいます。できる限り手引きの姿勢をとりましょう。
2) 手引き者の緊張感はそのまま伝わってしまいます。気持ちを楽にして、普段と変わらない歩き方をこころがけましょう。
3) どちら側につくかは好みや状況にもよります。相談して決めましょう。
■手引き者は半歩前に立つ
1) 手引き者は常に半歩前に立って歩きます。
2) 視覚障害者が手引きを受けている側の腕(肘)を直角に曲げるとちょうど半歩後ろにつくことができます。
3) 手引き者が半歩前に立つことで、歩く、曲がる、止まるという動きが自然に伝わります。
■手引きは二人分の幅をとる
1)手引きの基本姿勢は手引き者と視覚障害者の二人分の幅をとることに注意しましょう。
2) 視覚障害者側の障害物などにも注意が必要です。
3) 身長が違う場合には、頭上にも要注意です。
■狭い所を通るには
二人分の幅を確保できない所では、次のようにします。
1) 手引き者は、手引きしている肘を曲げて、手首を背中にまわします。
2) この合図に従って、視覚障害者は手引き者の真後ろにつきます。
3) 同時に視覚障害者は腕を少し伸ばして前後の間隔をとると、手引き者のかかとを踏まずにすみます。
4) 通り過ぎたら手引き者は腕を元に戻し、基本姿勢に戻ります。
★狭い所での注意点
1) 「危ない」「ぶつかる」「せまい」という言葉は、周囲の状況を目で確認できないと、より大げさに感じる場合があります。さり気なく合図しましょう。
2) 事前に合図の練習をしておくとスムーズに歩けます。
■手引を持ち替える時は
1) 手引き者は手引きの手を持ち替えるように伝えます。
2) 視覚障害者は手引き者から離れないように注意しながら、手を持ち替えます。
3) 手引き者が横に移動するとスムーズにいきます。
■道がふさがっていてよける時は
1) どうしても歩道を歩けず、車道にでなければならない時は、車の接近には充分注意しましょう。
2) 歩道の縁石の段や電柱、並木、信号の制御機の箱などの障害物に注意します。
3) 車道に出ると動きが複雑になります。歩道を歩けない理由を簡単に説明しておくと安心です。
■溝をまたぐ時は
1) 溝に対してまっすぐに近づきます。
2) 溝の手前で一旦立ち止まり、溝をまたぐことを伝えます。
3) 視覚障害者はつま先や白杖で溝の手前の縁を確かめます。
4) 手引き者が先に立ってまたぎ、視覚障害者が続きます。
★溝をまたぐ時の注意点
1) 手引き者の基本姿勢のまままたぎます。
2) 手引き者は手引きの肘を後ろに残さないようにします。残すとまたぐ距離がうまく伝わりません。
3) 視覚障害者は少し大またに足を出すとうまくいくでしょう。
4) 足を出すところに白杖を誘導して確かめてもらう方法もあります。
■段差をこえる時は
1) 段差や階段に対してはできるだけまっすぐに近づくことが大切です。
2) 手引き者は段差の手前で一旦立ち止まります。そして段であること、上りか下りかをはっきりと伝えます。
3) 視覚障害者がつき先か白杖で段を確認してから手引き者が先に立って上り下りします。
4) この時も手引きの基本姿勢は崩さないようにしましょう。
★段差での注意点
1) 歩道の縁石が丸くなっている所などでは段に対して斜めになりがちです。できるだけまっすぐ近づくことが大切です。
2) 高さがある段の場合も、手引き者が先に上り下りすると、その高さをうまく伝えることができます。ただし、手引きの肘を曲げたり、残したりすると伝わりにくくなるので、常に自然体を保ちましょう。
■階段を上り下りする時は
1) 段と同じように、階段に対してまっすぐ近づきます。
2) 階段の手前で一旦立ち止まります。
3) 階段を上り下りすることを伝えます。
4) 視覚障害者はつま先か白杖で最初の段を確かめます。
5) 手引き者が先に立って、手引き姿勢のまま上り下りします。
6) 自然体を保つと手引き者の肘の高さの変化で階段の終わりが分かるはずです。
★階段での注意点
1) 階段には必ずまっすぐに近づきましょう。斜めに近づくとタイミングがあわず、つまづいたり踏み外したりすることがあります。
2) 階段はリズミカルに上り下りすると案外うまく行くものです。
3) 声かけは階段のすぐ手前で止まってからでも遅くありません。逆に早すぎると、どこから階段が始まるのか分かりにくくなり、かえって不安になることがあります。
4) 足腰が弱っているかたや階段に不安を感じる場合は、手すりをもって上り下りするのも方法です。
■エスカレーターを利用する時
1) エスカレーターを利用すること、上りか下りかをはっきりと伝えます。
2) 乗り口で一旦立ち止まり、手すりに誘導します。
3) 手引き者が先に、正しく乗ります。
4) 視覚障害者が続いて一段うしろに乗ります。
5) 下りる時は手引き者が声をかけて先に一歩踏みだし、視覚障害者が続きます。
★エスカレーターでの注意点
1) エスカレーターに慣れないと不安なものです。あらかじめ利用してよいか確かめましょう。
2) 不安な場合は無理をせず、エレベーターや階段を利用するのも方法です。
3) 手引き者自身がエスカレーターを充分安心して使えるよう、日頃から練習しておきましょう。
■ドアを通り抜ける時は
1) まず、ドアを通ることを伝えます。
2) 手引きでドアに近づき、手引き者がドアを開けます。
3) ドアが、手前か向こうか、右か左かをはっきり、分かるように伝えます。
4) 開けたドアを視覚障害者に、空いた手で押さえてもらいます。
5) 手引き者が先にドアを通り抜け、視覚障害者が続きます。
6) 視覚障害者がドアを閉じるのを待って、先へ進みます。
★ドアの通り抜けの注意点
1) ドアを開ける役割と閉じる役割を分担すると、楽に通り抜けられます。
2) ドアのある側の手を使えるように、あらかじめ手引きを持ち替えておくとよいでしょう。
3) 資格障害者がドアを自分の手で押さえると、ドアの位置がはっきりと分かり、衝突を防ぐことができます。
4) 慣れない場合は、無理に分担する必要はなく、手引き者がドアを押さえて通り抜けてもかまいません。
■一時的に離れる必要がある時は
1) 短い時間でも、待ってもらう必要ができた時には、壁や柱、ベンチなどのよりどころとなる場所へ案内します。何もないとこで待つのは不安なものです。
2) 離れる前に周囲の状況を簡単に説明しておきましょう。
3) 離れる理由やどのぐらいの時間かを伝えると、待つ間も安心です。
■座席へ誘導する時は
1) 椅子や座席へ誘導する時は、椅子の位置と向きが分かるようにします。
2) 背もたれや座面に手を誘導して触れてもらうと分かりやすくなります。
3) 座る方向と一致するように誘導すると良いでしょう。
4) ベンチの場合は正面から近づくのも方法です。
■座席へ誘導する時の注意点
1) 視覚障害者が自分の手で確認できるように配慮しましょう。
2) 机に向かって座る場合は、椅子だけでなく机にも手を触れてもらうと分かりやすくなります。
■トイレに案内する時は
トイレの説明は手短に、素早く、が原則です。言葉がうまくでてくるように、必要な情報提供の練習を普段からしておきましょう。
1) トイレで必要な情報とは、
A) 便器の種類(和式・洋式)と位置と向き
B) トイレットペーパーの位置
C) 水洗レバーの位置と使い方
D) くず入れの位置
E) カギのかけ方
などです。
2) 男子小用の場合は、便器の正面に案内し、水洗用のパイプか便器上端に手を誘導して場所を確認してもらいます。
3) 手引き者は少し離れて待ちましょう。
4) 用を足し終えたら洗面台に誘導します。
★トイレに案内するときの注意点
1) 男性が女性を、女性が男性を手引きしている時は、他の利用者にトイレの中の誘導をお願いすることも必要になります。
2) 日頃から言葉がうまくでてくるように練習しておきましょう。
3) 外出前に用を足しておくことも大切です。
■テーブルの上を説明する時は
1) テーブルの上、正面にある物を最初に説明し、確認してもらい、起点とします。
2) 確認できたものを中心にして周囲の物を説明し、確かめてもらいます。
3) コップなどの位置を変える時には、移動することとその位置を伝えておきましょう。
★テーブルでの注意点
1) 時計の文字盤にたとえて説明すると分かりやすくなることがあります。
2) 向き合って説明する時は、左右を間違えやすいので注意します。
3) 砂糖、調味料は、手を貸す必要があるかどうか、視覚障害者によく聞いて決めて下さい。好みもありますし、特に塩分や糖分を制限しているかたもおられますので、注意しましょう。
■方向や位置を説明する時は
1) 視覚障害者の前後や左右を用いて方向を説明します。
2) 時計の文字盤に例える場合は、
正面が12時、真後ろ(または手前)が6時、右が3時、左が9時となります。1時や10時といった中間の時刻も用いることができます。
■白杖の扱いについて
1) 手引き時にも白杖はいろいろな場面で役立ちます。必ず携帯し、折りたたみはできるなら伸ばしておいてもらいましょう。
2) 白杖はできるだけ使用者自身が管理するようにしましょう。
3) 白杖は壁に立てかけると転倒します。床に寝かせて置いた方が良いでしょう。
■バスを利用する時は
1)バスの乗り降りは階段とほぼ同じ要領です。ステップが普通の階段より高いだけです。
2)乗車口まで手引きで案内し、手引きのまま乗るか、あるいは手引きをといて手すりをつかんでもらって乗ると安心です。
3)車内では手すりなどをしっかりつかみ、座席が空いている場合は座席へ誘導する要領で。
4)降りる時も手引き者が先に立ちます。手すりを持って一人で降りてもいいでしょう。
■電車を利用する時は
1)ドアの正面に立ちます。
2)ホームの縁、電車の車体に対してまっすぐに近づきます。
3)溝をまたぐ要領で手引きの基本の型のまま手引き者が先に立って乗り込みます。
4)ドアの手すりに誘導して一人で乗ってもらうのも方法です。
5)ベンチへの誘導の要領で座席へ誘導します。
6)降りる時も同様に。
★電車を利用する時の注意点
1)ホームと車体の間隔が広い場合は手すりを利用したり、白杖の先で間隔を確かめてもらう、足を置く場所を白杖で示すなど、工夫しましょう。
2)手引きのまま乗降する時は、思い切って動いた方が安全です。
3)手引き者は乗り込む時に手引きの肘を後ろに残さないようにしましょう。
4)乗降口に段がある時は、溝をまたぎ、階段を上る方法を応用します。
■タクシーを利用する時は
タクシーに限らず乗用車を利用する時の方法です。
1)タクシーに手引きで近づきます。
2)手引きを一旦といて、ドアの縁と車体の屋根に手を誘導して触れてもらいます。
3)視覚障害者はシートを確かめて乗り込みます。白杖は最後に引き込むとうまくいくでしょう。
4)手引き者が続いて乗ります。
5)手引き者が先に降りると安全を確認しやすくなります。
★タクシーを利用する時の注意点
1)ドアや車体の縁に顔をぶつけないように注意しましょう。
2)タクシー代の支払いは相談して決めましょう。
■駅で改札口を通り抜ける時は
1)各自が乗車券を持ち、改札を通る時に改札員に提示します。
2)狭い所を通る方法で手引き者が先に立って通るとスムーズにいきます。
3)通り抜けたら元の手引きに戻ります。
4)自動改札では、乗車券を持つ手を入れ口に誘導するだけでよいでしょう。
5)外出に慣れていない場合は、二人分の乗車券を手引き者がまとめて持ってもかまいません。
■ホームの上を歩く時は
1)ホームの上を歩く時はホームの端から2メートル以上の距離を保ちましょう。
2)ホーム中央付近に敷設された黄色の点字ブロックは誘導用、ホームの端に近い幅の狭い点字ブロックは端に近いことを表示するものです。幅の狭い点字ブロックを踏んで歩くのはやめましょう。
3)ホームの端を白杖で伝う方法は非常に危険です。絶対にしてはいけません。
4)階段などでホームの幅が狭くなっている所は特に注意が必要です。電車が通過している時に狭いところを歩くのは避けたほうが良いでしょう。
5)一方が壁になっているホームでは壁側に視覚障害者が立つようにすると安心です。
■劇場や会館では
劇場や会館の中では、階段、ドア、狭いところ、座席への誘導などの方法を利用して案内しましょう。
劇場の座席へ誘導する時は
1)劇場の座席は手引き者が先に立ち、横向きに入ると良いでしょう。
2)視覚障害者は前の座席の背もたれに、空いている手を触れて伝うようにします。
3)立つ時のことを考えて、視覚障害者が先に、手引き者が後に並んで入っても良いでしょう。座席までの数を伝えておくと分かりやすくなります。
■喫茶店やレストランでは
喫茶店などでは、ドア、狭いところ、座席への誘導などの技術を用います。
1)座席についたら、テーブルの上を簡単に説明し、周囲の状況や店内の様子なども説明すると落ち着けます。
2)視覚障害者の好みをよく聞いて、メニューは詳しく読みましょう。値段も忘れずに読みます。
■街角で出逢った時は
1) 街角で視覚障害者に出逢った時、困っている様子があれば何か役に立てるかもしれません。一声かけてみましょう。
2) 「どちらへいかれますか?」「ご一緒しましょうか?」と聞くと良いでしょう。
3) 同じ方向へ行くのであれば手引きでご一緒するのも方法です。
4) どこまで案内すればよいかよく聞き、お互いに無理のないように、分かりやすい場所(改札口や建物の入り口、通路のはじまりなど)まで案内しましょう。
5) 案内を終えるときは、周囲の状況を簡単に説明してから分かれましょう。場所や方向、目印となる店や特徴など、役に立つことがあります。
6) 視覚障害者がいつも手引きを必要としているとは限りません。申し出を断られても特に気にする必要はありません。次の機会に改めてお願いします。
7) 次のような場面で声をかけてみて下さい。
・明らかに迷っている様子がある
・下り階段に斜めに近づいている
・プラットホームの端に近づいている
・混雑していて歩きにくい
・広い場所で方向を定めにくい
・信号の判断に困っている様子がある
・大きな通りや交通渋滞の時の横断
こういう場面では、ご本人が歩き慣れていても判断に困ることが多く、皆さんのお声が役立つことでしょう。
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視覚障害に関連して様々な誤解があります。たとえば感覚が鋭いとか、耳がいいとか。でも、それはみなさんにも備わった能力のはず。見えない分視覚以外の感覚に託した生活をしていると、当然みなさんより活用できるようになっているだけです。
ですから、見えないからといって、特別に考える必要はないのです。
ここに記した「手引き」の技術は、決して難しいものではありません。肩の力を抜いて、自然体で接していただければ良いのです。どう接していいか分からない場合は、ご本人にお聞き下さい。そうすれば会話もはずみ、楽しい時間がもてるでしょう。お互いに気持ちよく接することができるはずです。
「視覚障害」は簡単に理解できない課題かもしれません。でも、目の不自由な人たちはあなたの隣にもいるのです。一緒に歩み続ければ、きっとお互いに理解しあえることでしょう。
どうぞ、一声かけてみてください。
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